研究テーマ
3次元MHD平衡
核融合反応からエネルギーを取り出すために高温プラズマを閉じ込める手法としてトーラス型の磁場配位を用いた手法が研究されています。ドーナツ型のプラズマの磁場と圧力の定常分布を決める「平衡計算」が研究の出発点となりますが、最も重要なファクターが(位相幾何学的な意味での)分布の対称性です。対称性のない一般的な磁場配位に対してプラズマ平衡を求める方法の研究は核融合の研究開始から現在まで続く難問の一つですが、当研究室ではこの問題を解決するための計算アルゴリズムの開発や対称性の破れがプラズマの安定性や輸送に及ぼす影響の研究を行っています。
- HINTコードによる完全自由境界三次元MHD平衡解析
- リップルトカマクの3次元自由境界MHD平衡計算
- 反復法による二次元/三次元MHD平衡コードKUIQの開発
ディスラプション
ITERが採用するトカマク方式は核燃焼を見通すことのできる高い閉じ込め性能が実証されていますが、この方式では放電が不安定化した際にプラズマ閉じ込めに必要となる電流が急速に遮断される「ディスラプション」と呼ばれる現象への対策が不可欠です。当研究室ではディスラプション現象に関わるプラズマ物理の研究や、実験で観測されるディスラプションの挙動を再現するためのシミュレーションコードの開発、ITER機構との協力によるプラズマ強制冷却技術(粉砕ペレット入射 (Shattered Pellet Injection))の開発研究など、世界をリードする研究を行っています。
- トカマクプラズマのディスラプションを模擬する統合シミュレーションコードの開発
- トカマク放電の熱的安定性の理論的研究
- ペレット溶発モデルへの深層ニューラルネットワークの応用に関する研究
- 世界各国のトカマク実験装置との協力: ASDEX-U(独)、DIII-D(米)、JET(欧州)、KSTAR (韓国)など
核融合炉システムの最適化に関する研究
核融合エネルギーの実現に向けてはITERが採用しているトカマク型核融合炉だけではなく、ヘリカル型核融合炉、レーザー核融合炉、その他の革新的閉じ込め方式などさまざまな可能性が検討されています。いずれの炉も高温プラズマを閉じ込める本体システムだけでは完結せず、超伝導システムや大電力加熱機器、燃料循環系、計測系までを含む、最先端技術を結集した大規模複合システムとなります。そのような系の開発には実際の装置や材料を扱う物理(フィジカル)空間の開発研究だけでなく、モデリングや機械学習、予測・制御などのシステム工学、スーパーコンピュータやGPUを活用した高度計算科学(HPC)、人間がシステムを取り扱うためのヒューマンインタフェースなどのサイバー空間の研究開発が不可欠です。当研究室ではAI・機械学習を用いた最適化手法の核融合科学への応用や、仮想現実感(VR)や拡張現実感(AR)に基づくプラズマ可視化技術の開発などを進めています。
- 生成AIを用いた炉設計システムコードの開発
- 多目的最適化手法に基づくトカマクコイル配置の最適化
- アジョイント法に基づくプラズマ平衡再構成手法の開発
- 仮想現実感(VR)技術を用いたプラズマ可視化技術の開発