乱流と巨視的磁気流体不安定性の多階層相互作用による巨視的乱流輸送


外部加熱に制御された開放系としてのトーラスプラズマにおいて、微視的乱流による磁場揺動および巨視的磁気流体(MHD)不安定性による磁場揺動を自己矛盾無く解く乱流熱輸送の3次元シミュレーションを行った。二つの状況をシミュレーションした。一つは巨視的MHDに対して安定な場合、もう一つは巨視的MHDが不安定な場合である。
第一の場合、加熱に対する分布の硬直性を示すとともに、加熱による巨視的なプロファイル変化の時定数(プラズマ応答の時間スケール)が約50 a/v_Tiととても速いことを示した。
第二の場合、巨視的MHD不安定性により磁気島が現れた場合、発生した磁気島近傍で熱輸送が増大することおよび磁気島近傍でゾーナル流の分布が変化することを示した。そして、乱流と巨視的MHD不安定性の競合により巨視的乱流輸送が起こり、ヘリカルな平衡に遷移することをことを明らかにした。その過程を下図に示す(左図から右図へヘリカルな平衡へ遷移する)。

  • A. Ishizawa and N. Nakajima
    Thermal transport due to turbulence including magnetic fluctuation in externally heated plasma
    Nuclear Fusion, Vol. 49, (2009) 055015





  •  核融合プラズマ実験において、巨視的な磁気流体不安定性はプラズマの巨視的な変形を伴いプラズマ閉じ込めを劣化させる。また、微視的不安定性による乱流(微視的乱流)は異常輸送を引き起こし、プラズマ閉じ込めを劣化させる。従来は、磁気面破壊巨視的な磁気流体不安定性と微視的乱流のそれぞれのプラズマ閉じ込めへの影響は、空間スケールが分離されているために、独立に研究されてきた。しかし、現実のトーラス磁場閉じ込めプラズマ実験では、巨視的な磁気流体不安定性、微視的乱流および輸送障壁形成に関連したゾーナル流は共存する。そして、これらの現象の階層間相互作用の結果として、プラズマ閉じ込めを劣化させる過程は、ほとんど理解されていない。巨視的磁気流体不安定性と微視的乱流およびゾーナル流が共存し非線形相互作用することによりプラズマ閉じ込めが劣化する過程を明らかにする目的で研究を行った。
     巨視的磁気流体不安定性、乱流によって生ずる微視的揺動及びゾーナル流の多階層非線形相互作用のプラズマ閉じ込めへの影響を明らかにするために、新たに開発したシミュレーションコードを用いて数値シミュレーションを行った。その結果、微視的乱流とそれに伴って生ずるゾーナル流を含む準平衡状態が得られ、その後、この平衡の中に微視的乱流の揺動から巨視的磁気流体不安定性が発生し新たなヘリカル平衡状態へ遷移する過程をはじめて示した。この乱流とゾーナル流を含む準平衡状態の中から乱流の揺動が巨視的磁気流体として成長する過程を示したシミュレーションは、従来の線形不安定性の成長から始まる磁気流体シミュレーションと本質的に異なる新しいシミュレーションである。




    乱流による磁気リコネクション

    磁場閉じ込めプラズマや宇宙プラズマにおいて、ミクロスケールで特徴付けられる微視 的乱流とマクロスケールで特徴付けられるMHD現象はは共存し相互作用する。 この相互作用を理解する目的で二流体方程式の数値シミュレー ションを行った。角柱プラズマ中で、電流層の厚さが十分 厚くテアリングモード(自発的磁気リコネクション)が安定な場合であ っても、交換型不安定性もしくはイオン温度勾配不安定性によって駆動 された乱流が巨視的磁気島を生成する事を明らかにした。左図は静電ポテンシャルの揺動が乱雑であることを示す。右図は磁気リコネクションが起こり磁気島(プラズモイド)が生成されることを示す。