磁気リコネクション


無衝突磁気リコネクションにおける散逸領域

磁気圏や太陽などの無衝突プラズマにおいて大規模エネルギー解放を起こす無衝突磁気リコネクションが、アルフェン速度程度に速く起こる原因はリコネクション点近傍においてホール電流が流れるイオン散逸領域の出現である。(ここでイオン散逸領域は磁場が電子に凍結しイオンに凍結しない領域を示す。)この領域の広さがイオンスキン長であるかラーマー半径であるかが、長年議論されてきた。我々は、大規模開放系粒子シミュレーションを行い、ラーマー半径が小さくない領域においてもジャイロ粘性相殺が起こるという驚くべき結果を得た。そして、イオン散逸領域の広さがラーマー半径で規定されることを示した。またこの結果は、ホールMHDを用いて磁気リコネクションが起こる領域を記述するためには、ホール項のみならず圧力テンソル項を同時に追加しなければならないことを示している。左図は磁力線(中央で磁気リコネクションが生じている)、右図は面に垂直方向の電流密度分(磁気リコネクションが起こる場所で電流分布は非常に大きくなる)を表す。また、電子散逸領域においても同様の機構があることを明らかにした。



可逆な磁気リコネクション

磁気リコネクションは、宇宙プラズマや実験室プラズマにおいて磁場エネルギーが解放されて運動エネルギーに変換される基礎課程と考えられている。我々は、無衝突磁気リコネクションのジャイロ運動論シミュレーションを行い、可逆な磁気リコネクションが起こることを初めて示した。磁気リコネクションは以下のように起こる。電子慣性効果によって反平行磁場の磁気中性面において磁気リコネクションが起こり、電流駆動型不安定性が成長する。この不安定性に続いて、電流密度分布がシート状から十字型の構造に変化しつつ磁気リコネクションが加速する。そして、すべての磁力線がつなぎ変わった状態が実現する。この状態から時間反転シミュレーションを始めたところ、上述の磁気リコネクション過程が、逆順に実現することを明らかにした。この時間反転リコネクションでは、運動エネルギーが磁場エネルギーに変換される。時間反転磁気リコネクションの安定性を解析した結果、十字型電流分布を伴う磁気リコネクションは時間反転に対して安定であり、一方、シート型電流分布を伴う磁気リコネクションは時間反転に対して不安定であることを明らかにした。図は磁力線の時間変化を示す。左側が時間前進、右側が時間反転の時間発展。