磁気島


トーラス型磁場閉じ込め中で磁気島が現れた場合、コアプラズマの高圧力化(達成できるベータ値)が制限される。 磁気島の時間発展は修正型ラザフォード方程式で記述できると考えられている。 その中で磁気島の周りの流れによって生じる分極電流項のみ磁気島幅依存性が明らかになっていない。 磁気島生成への流れの影響は大型ヘリカル装置(LHD)内の磁気島のヒーリングに関連するとともに、トカマクにおける新古典テアリングモードの励起に重要であると考えられている。 この項を評価するためには磁気島がプラズマ中で回転する物理機構を理解する必要があるからである。
我々は分極電流項の磁気島幅依存性を明らかにした。特に、磁場閉じ込めプラズマでは通常イオン温度は有限であるが、従来は冷たいイオン近似の下で解析がなされてきた。我々は、イオン温度が有限な場合の磁気島のシミュレーションを初めて行った。その結果、大型ヘリカル装置(LHD)のようなヘリカル系で磁気島がポロイダル方向に固定された場合、分極電流は冷たいイオン近似を用いた場合の数十倍に大きくなることを明らかにした。また、トカマクのように磁気島がポロイダル方向に自由に回転できる場合、磁気島の幅がラーマー半径の5倍程度以上であると、分極電流が磁気島成長を駆動することを明らかにした。図は分極電流の磁気島幅依存性を表す。 ×であらわされる冷たいイオン近似(Ti=0)を用いた場合は常に負(安定), +で表わされる有限イオン温度(Finite Ti)は、幅が大きい場合正(不安定)である。

  • A. Ishizawa, F. L. Waelbroeck, R. Fitzpatrick, W. Horton, and N. Nakajima
    Magnetic island evolution in hot ion plasmas
    Physics of Plasmas, 19, 072312 (2012)



  • さらに我々は乱流(下図)によって生じる分極電流効果を評価した。そして、乱流は分極電流を通して磁気島を駆動することを明らかにした(下図)。また、磁気島に作用する力を評価することにより乱流による粘性係数は1x10^{-5}Lv_A程度であることを明らかにした。
  • A. Ishizawa and F. L. Waelbroeck
    Magnetic island evolution in the presence of ion-temperature gradientdriven turbulence
    Physics of Plasmas, 20, 122301 (2013)